2017年11月19日日曜日

020 / 453 1993年の女子プロレス

10点満点で、7点。

面白かったが、タイトルには違和感があるな。インタビュー集だし、1993年の話題が多いわけでもないし、そこを中心に時系列で追っているわけでもない。「全女を駆け抜けたレスラーたち」くらいの方が、内容に合致していると思う。1993年はJWPもLLPWもあったが、当時全女にいた、あるいは全女出身だったレスラーばかりで、例外は尾崎魔弓、里村明衣子、広田さくら、ロッシー小川だけ。ロッシー小川は全女のスタッフだし、里村と広田は当時デビューどころかプロレス界に入門すらしていない。当時現役のレスラーとして、完全に全女の外からの視点で語るのは尾崎だけ。このタイトルを付けるのなら、何度も名前が出てくる神取忍とか、あるいは工藤めぐみ(全女出身だけど)、キューティー鈴木あたりも登場しないとつまらない。あるいは全女にこだわるのなら、ダンプ松本、井上貴子、堀田祐美子あたりにも登場してほしかった。北斗晶も重要人物として、ほぼ全員のインタビューに名前が登場しているが、残念ながら収録が拒否されたとのことで収録されていない。
(雑誌連載時は載ったようだ)

読めば読むほど、著者が言うとおり全女とは「最狂のプロレス団体」だと思う。多くの試合をシュートで行い、タイトルを奪われたら暗黙の了解で引退とか。どれだけ貢献していても容赦なく肩を叩くし、選手同士の対立を平然と煽るし、それをリングの上で出させるとか、団体というか組織運営としてはありえない。だからこそ狂った魅力があったのだろうか。

著者(インタビュアー)がそう思うから誘導しているのかもしれないが、基本的に女子プロレスの歴史は、クラッシュ・ギャルズ以前と以後で大きく別れる、というのが全員の共通認識になっている気がする。そして、長与千種こそが史上最高の天才プロレスラーで、長与の穴を埋めようとブル中野が歴史を変えたとも。クラッシュの全盛時は見ていないから、バラエティ番組などのダイジェストでしか知らないけれど、たしかに相当な影響力だったんだろうと思う。でも、自分が見ていた世代を中心に考えるからだとは思うが、本当に女子プロレスを変えたのは豊田真奈美じゃないかなあ。クラッシュやブル、アジャたちは女子プロレスを男のプロレスに近づけたけど、豊田は「女子にしかできないプロレス」を突き詰めた気がする。ああでも、豊田が超人過ぎて、豊田型の選手が続いてないからやっぱり駄目か。

基本的には面白いインタビュー集だが、著者の「女子プロレスの歴史において、長与千種、アジャ・コング、北斗晶の三人は別格の存在」という主張が強すぎて、読んでいて違和感があった。確かにそれぞれ巨大な存在だけど、それを押し付けるなよ。


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